《MUMEI》

「アンタ、俺の言ったことが聞こえなかったのか?」


俺は無意識のうちに先生の胸ぐらを掴んでいた。

きゃあっ!と女子の悲鳴が上がる。


男子は面白がって罵声を飛ばしている。


「き、君、放しなさい。」


声が裏返っている。


「とりあえずもうホームルームは終わるから、

みんな解散しなさい。」


先生はキッと俺を睨むと無理矢理俺の腕を振りほどき、
そそくさと教室を出て行った。


どうせ校長にでも報告するのだろう。


やれやれと思いながら、今日新しく配られた教科書をカバンの中にしまっていると、


「お前、入学式早々やらかしたなっ。」


いきなり後ろから声を掛けられた。


振り返ると、
偉く小さな男が俺を見上げている。


「俺、成瀬佑っ(なるせゆう)宜しくな!」


成瀬は白い歯を見せながら二カッと笑った。


「お前、場違いじゃねぇ?」


俺はそいつを見た途端、急にからかいたくなった。


「え?どうして?」


「ここ高校だぞ。
小学校はあっち。」


俺は小学校がある方角を指差す。


勿論、軽くからかったつもりだ。


だが、


「はあ?失礼だな!俺は高校生っ!!」


マジギレしてやんの。


笑いを堪えていると、
突然そいつの持っているものに目が釘付けになった。

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