《MUMEI》 冬の屋上(寒っ…) 屋上に出た途端、吐く息が白くなった。 十一月の屋上には、当たり前だが人がいなかった。 『一人になりたい時は、誰にでもあるよ』 そう、春日さんの手紙にあったから、俺は何となく一人になりたい時は、屋上に来るようにしていた。 別に、以前のように無理に演技して疲れていたわけではない。 友達と過ごすのは、楽しい。 ただ、時々、こうしてボーッと空や流れる雲や、遠くに見える今は雪で白くなった山々を見ていたい時が俺にはあった。 (昔、あんまり外に出れなかったからかなあ) そんな風に考えていると… 「でも、時々辛そうにしてるじゃないか! 俺だったら、そんな顔はさせない! いつも側にいて、安藤さんの事だけ考えて、安藤さんを守る!」 「やめてよ!」 争う男女の声が、聞こえてきた。 寒いから、二人は屋上に出ずに、屋上の扉の前で話しているらしく、俺からは姿は見えなかった。 ガンッ! 「やだ! 離してよ!」 扉が大きく揺れた。 嫌な予感がして、俺は扉を叩いた。 「大丈夫ですか!? 安藤先輩!!」 何度も、力一杯叩いた。 やがて、ゆっくり扉が開いた。 前へ |次へ |
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