《MUMEI》 「地下は底辺だ。」 千秋さんは食事を終えてから懲罰室に案内してくれた。 地下が千秋さんの屋敷にも存在していて、コンクリートで覆われた床と壁は冷気を運ぶ。 「あの……此処はまるで」 「牢獄だからな。」 口から自然と零れた単語は千秋さんに何の違和感も与えない。 「奴隷は団体で主人に仕える。月に三回ミスする人間が三人いれば全員地下に戻る、新しい団体が牢獄から出される。ミス一回につき懲罰室に半日軟禁。 牢獄とは別の、突き当たりの小さい個室だ。」 コンクリートの壁に埋め込まれている扉は黒い鉄製だが突き当たりの扉は赤い。 鍵の束の中から千秋さんは一つを選び出し開錠する。 紫に腫れた瞼に、両手は鉄の枷で天井の隅に繋がれている。 足は膝が僅かに曲がり、爪先で立てるくらいの状態で新米の女性がぶら下がっていた。 短時間でいかに凄惨に暴行されたかが理解できた。 「……酷いです。誰しも完璧でいられる訳が無いじゃないですか。」 「普通のことだ。集団を束ねるためのルールだろ。」 「……詭弁です。」 「モモ、この屋敷の主人は氷室の人間だ。それを守ることは首輪を着けたものの当然の義務だ。」 首輪のことを悟られないようにずっと隠していたのに指摘された。 家庭教師の為に此処に呼び付けられた訳じゃない? 気まぐれか、意味があるのか、私はどうすればいいのか…… 「彼女を解放して下さい。」 「駄目だ。ルールだから。」 千秋さんは冷徹に言う。千石様を見ているようだ。 「……私が代わりに受けますから……、それなら良いですか?」 「良い訳が無いだろ。首輪が掛かっている意味を知らないのか。」 分からない、千石様の所有物である証じゃないのか。 「傷んでいるものに傷は付けられない……“ ”もそうだった。」 千秋さんは鍵を取り出して私に渡してくれた。 何故、千秋さんがその名前を知っているのだろうか…… 「モモ、この地下を変えたいなら千石から解放されろよ。そうすれば飼ってやるから。」 「千秋さん、私は千石様にも誰にも飼われていません。私の体は私のものです……」 唯一無二の私のもの、たとえ、首輪を嵌められても………… 前へ |次へ |
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