《MUMEI》

「弥一、良い飲みっぷりだなあ。俺にもひとくちー」

先輩、近い……
こんなに近いと……もっと近付きたい……




「やああああ!助けてぇえ……ムグ!」


「弥一ッ!しーっ!」

先輩の掌が俺の口を塞ぐ。
抵抗するような力は俺には無い。


「弥一……俺が嫌いか?触って欲しく無い?」

俺の口を塞いだまま、先輩の表情は深刻さをもの語っている。


「駄目です、触ったりなんかしたら俺……へ、変態になってしまうんです!」

言ってしまった……
嫌われてしまう……。


「……弥一、何?へ、変態なの?」

前髪を指で払われるだけでもう……。


   ええい!

だ、だだだだだ、抱き着いてしまった!


「おおう、弥一積極的ー。」

改めて指摘されると恥ずかしい。
先輩の、手が俺の腰辺りを触った。


も、もしかして……

「ごめんなさい。
俺が触ってしまったばっかりに先輩へ変態が移ってしまったんですよね?」


「……もう駄目だ弥一……」

耳元で先輩に囁かれる。
もしかして、幻滅された……?!


「そ、そうですよね、俺みたいな変態は相手にしてられませんよね……」

先輩の腕から逃れようともがくが、動けない。


「好きだーーーーーー!!」

大声で叫ばれた。


「……? ?」

理解できずに辺りを見渡すが周りの人が俺を見ていたので俺に言ったらしい?


「弥一、抱き枕にしたいよ弥一……」

先輩がぎゅーっと抱き抱えてくれる。
よかった、先輩に嫌われてなかったんだ……





「目立つんじゃ阿呆!」

副部長のげんこつが世喜先輩に降る。
俺は白戸によって先輩から引きはがされた。


「目を離すとこれだからな……。」

溜め息を漏らしながら白戸が俺を小脇に抱える。


「皆、駄目だあ、近付いたら変態になってしまうんだあ……」

どうしよう俺のせいで皆変態になってしまうんだ……


「……重症だな。」

白戸がやけに淋しげな目付きだ。


「私がもっとしっかりしていれば……」

副部長が遠い目をする。


「弥一はこのままが可愛いからいいんだよ。な?」

よく分からないけど世喜先輩が笑ってくれると安心する。


「ああもう、厳しくしたいのに可愛くて強く言えないわあ。」

頭を副部長になでなでされる。

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