《MUMEI》

「あ、これ?」


どうやら俺の様子を察したらしい。


「じゃじゃーん!」


成瀬は得意気に笑うと、俺の目の前に突き出した。


背伸びまでしてそんなに自慢したいか……。


あ、なるほど。


「それ最新のスパイクだな。」


「うん!!今年の最新モデルなんだ〜。」


「すげぇ。」


「だろ?」


成瀬がニシシと笑う。


「いや、そう言う意味じゃなくて…。」


「?」


「お前とそのスパイクのギャップが激しい。」


一瞬の沈黙。


「なんだよそれ!

このスパイクと俺とじゃ釣り合わないってのかよ!」


成瀬が頬を風船みたいに膨らます。


俺はそんな成瀬をよそに、
新たな疑問を抱いていた。


「このスパイク…陸上用のだよな?」


「へ?あ、うんそうだけど…」


「ふーん…お前も陸上やってんだ。」


「えっ…も?」


「いや、なんでもない。

このあと用が在るからよ、またな。」

「えー気になんじゃんよぉ。」


いけないいけない。

つい話しこんじまった。


こんなこと、あの人にバレたらいけないのに…。

俺は成瀬を後に、急いで教室を抜け出した。

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