《MUMEI》
因幡少年
僕は因幡本家の長兄として育った。
伯父や伯母、分家の従兄弟は僕より年上で体の弱い僕は下に見られがちだった。


僕を産み亡くなった母の後妻として迎え入れた義母と父の間に産まれたのが義妹にあたる依子だ。
本家の娘である依子は跡取りである僕よりも遥かに従兄弟達には疎ましい存在だった。
彼女は蝶のように可憐であったが為に父は溺愛し嫁には出さず、また僕と共に因幡本家の跡取りとなるように宣言したのだ。

確かに体の弱い僕一人では因幡本家の財産は分家に食い潰されてしまいかねない。
父の選択はあながち間違いではなかっただろう。

しかし、幼い依子には重荷過ぎた。

分家から陰湿な嫌がらせを受けて義母は入水自殺し同じように自殺をさせないようにと哀れな依子は父によって部屋に閉じ込められたのだった。

思えば、義母の死が父を狂わせたのだ。

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