《MUMEI》 花の中「依子……逃げよう僕と」 火を放ち依子を抱きしめる。 明々と紅蓮に炎が燃え盛る。 「謀ったなあああ、武丸うううう!」 炎の中から伯母の声をした塊が飛び出して来た。 片手には鎌がある。 「危ない兄様!」 僕を庇い依子は深手を負った。 伯母は力尽き、その場で倒れ、燃えてゆく。 「……依子、おお、依子!」 僕が愚かなばかりに依子は傷付いてしまった。 「兄様、私、昔よく遊んだ花畑に行きたい……」 僕の腕で依子は息も絶え絶えに言う。 僕は依子を背負い、花畑に行った。 白い、香り豊かな花が広がっている。 「綺麗……兄様、苦しい…………… あんな、 死に方は嫌よ……………… お願い、兄様……依子を 兄様の手で…………」 依子の首へと気が付けば手を掛けていた。 花の中に依子を埋め、火を放つ。 僕は、その燃え上がる光景を小高い丘に上り、パイプを吸いながらいつまでも見ていた。 前へ |次へ |
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