《MUMEI》
地下の話
「僕の依子は幻だったと……?」
武丸氏は親指の爪を噛む。

「地下室には特殊に香る芥子……“依子”を栽培していたんですかね?屋敷が全焼すれば村一帯に大麻の煙が充満し曖昧な記憶になるのかもしれませんね……」
私はいつもと同じ言葉を繰り返す。

「……僕は……依子を殺したんだ。僕は……」


『……兄様……』

「依子……!」
武丸氏は格子の先の私を見ているが別の空間へと視線をやっていた。


時計を見ると一時間を回っていた。


「では……武丸さん、また来ますね。」
武丸氏にはもう聞こえない。
格子にしがみついて一人呟いている。

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