《MUMEI》

「お前、それを知らないで今まで俺と話してたのか?」


「うん。
だってさあ、まさか同じクラスに全国レベルの奴いるって、
思いも寄らないじゃん?」


「……。」


「しかもこの学校公立だろ?
フツーどっか陸上で有名な私立の学校に引き抜かれたって、
考えるよっ」


「ふーん…。」


「でもさあ、なんで全国レベルの奴がこんなとこにいるわけ?」


成瀬が俺の顔をのぞき込んで来る。


俺は心の奥底から何かムラムラする感覚を覚えた。


「あ、でもここの陸上部に入る訳じゃねぇんだよな?」


「。。。さっきから聞いてらよくまあ淡々と語ってくれるじゃねぇか…。」


「??」


「あのなあ、人の事情も知らないで軽く語ってんじゃねぇよ!!
何度も俺の名前呼びやがって!!」


「ご、ごめん…」


「お前もやっぱり俺がすげぇからって態度変えるわけ??」


「ち、違っ!!
そんなつもりじゃ…」


「ふん、やっぱりお前も一般人と変わらないな。

少しでも期待した俺がバカだった。」


「だから違うって!!
誰だってクラスメイトが、
実は全国レベルでマスコミからも騒がれてる凄い人でしたーって、
知ったら驚くだろ?」


「そこがだ…。」


「へ?」


これだから一般人は…。

俺は何も話す気が失せて、
ただぼーっと賑やかな教室を眺めていた。

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