《MUMEI》
クリスマスの予定
「ところで、祐也は、クリスマスどうするの?」

「特に、何も…」


旦那様といる時も、俺はクリスマスや誕生日といった普通のイベントを行った事は無かった。


だから、十二月に入り、周りがウキウキし始めても、どこか冷めた目で見ていた。


「遠距離の…恋人とは、過ごさないの?」

「っ…誰!……祐から?」

俺の言葉に、志貴は無言で頷いた。


(あいつ、どこまで喋ったんだ?)


志貴は、恋愛に関しては普通の概念を持っているはずだ。


俺が何も言えないでいると、志貴は静かに言った。


「年上の、しっかりした人なんですってね」

「… … うん」


間違ってはいないから、俺は頷いた。


「いつか、紹介してね。友達として、会ってみたいから」

「… … 」

「今じゃなくていいわよ。
それより、クリスマスは空いてるの? 空いてないの?」

「空いて…る」


忍は、多分、仕事だ。


奥様はパーティーが好きだと聞いていたから、クリスマスもパーティーをするだろう。


(…旦那様の一周忌が終わるまでは、控えてるらしいし)


「じゃあ、うちに来ない?」


俺は、この時『うち』は津田家だと思っていた。

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