《MUMEI》
今度こそ
「俊、俊ってば」

ゆさゆさと身体を揺さぶられて、オレは目を覚ました。

「大丈夫か……?」

心配そうな由自の顔が目の前にあった。

「ぅ…ん?」

身体を起こす。

自分がさっきまで何をしていたか寝惚けた頭でもわかった。

「あ……由自、ありがとう」

身体はきれいに拭かれ、服も着替えさせられてオレはベッドに寝かされていた。

「びっくりした〜……。ひとりでヤって気ィ失うなんて初めて見たよ。オレが見てるから余計興奮したんだな」

「…………」

「あ、図星?」

「……うるさい」

顔が熱くなる。なんでわかるんだよっ!

「次はちゃんとオレも一緒にイくから、それまで待って?」

「……うん。頑張る」

由自が嬉しそうに笑ったから、オレも嬉しくなった。

「……でもあと二ヶ月かぁ……。早いな」

「あと由自が苦手なのって何?」

「数学さえできればあとはなんとかなるよ」

「……マジ?」

「おぅ。数学はケアレスミスが多いから心配なんだよ。オレは暗記は得意だから日本史は大丈夫。物理もまぁ大丈夫だな」

「あとは?」

「国語と英語か?あれは感性の問題だとオレは思ってる」

「……まぁな。あ、化学は?」

「暗記得意って言ったろ?」

「そっか」

「12月までに理系は終わらせて、1月から暗記を始めるつもり」

「わかった。オレもそれで計画立てるよ」

「頼むな」

「あ、オレV・Cは教えられないぞ。苦手だから」

「えっマジ!?」

「マジ。なんか好きになれないって言うかさ。それは多分できないからだろうな」

「……お前1位じゃなかったっけ」

「1位だったけど?」

「それ苦手って言わねぇよ」

「そう?とにかく、できるだけ聞かないでくれ」

「……わかった」

あ――…由自と久しぶりに真面目な話をした気がする。

今までどんだけくだらない話をしてたんだ、オレ達。

……今度こそ受かってくれよ、由自。

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