《MUMEI》

「失礼しまー…す」



保健室のドアを開けると、いい匂いが広がった。



「あら」
「おす」



香織さんと、椎名くんの声が重なった。



「…アッサム??」



私が言うと、



「正解」



香織さんが微笑んだ。



「なんだそれ??」



椎名くんが首を傾げる。



…今椎名くんが飲んでる紅茶の種類のことです。



へへ、と笑って椎名くんの隣に腰掛けると、



「…なあ、なんだよ、『あっさむ』って??
―…細胞説の人??」



椎名くんが訊いてきた。



「…細胞説の人は、シュワンでしょ!」



私が答えると、



「…そうだっけ」



と、眉をひそめた。



―…そういえば、今日は『ファーブル』って答えてたっけ…


首をかしげている椎名くんを見て、ふきだしてしまった。



「なんだよ??」



椎名くんが不機嫌そうな顔をする。



「ごめんごめん…ファーブルって…ぷぷ」



私が謝ると、椎名くんは



「し、仕方ねえだろ!!…あれがおれの精一杯だったんだよ!!」



と、顔を赤くした。



…椎名くんと居ると、なんかほっとするなあ。

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