《MUMEI》

「失礼します」



保健室のドアを開けると、香織センセーが紅茶を飲んでいた。



「あら、椎名くん」



センセーはおれに椅子を勧めて、



「紅茶、飲む??」



と、聞いた。



「あ、はい。いただきます」



おれが答えると、



「…どう??進歩はあった?」



と、おれに紅茶を差し出しながら訊いてきた。



「…全然っす。あ、でも今日ちょっとは期待してます」


「そう、よかったわね」


「…でも、まだ蓬田が来ないと…」


「今日はようちゃんも来るの??」


「あ、はい」


「…そう」



そこで、香織センセーはカップを置くと、



「―…で、あなたのほうは、どうなの??」



と、あの謎めいた笑みを向けてきた。



「…体調のことっすか」



センセーが頷く。



「…こっちも全然すよ」



答えると、



「本当に?…心当たり、本当に無いの??」



と、返された。



「…それは―…」



言葉に、詰まる。



と、そのとき。



「失礼しまー…す」



『おれ』の声。



―…助かった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫