《MUMEI》 あのネコは写メにはいなかった。 蓬田もネコを探すと言ってくれたけど、 それに意味があるのかさえ分からなくなってきた。 …おれがしっかりしなきゃいけないのは分かってる。 でも、なんの手懸りも無いんじゃあ―… おれが途方に暮れていると、 「あ、あの!椎名くん、」 蓬田が、口を開いた。 「うん?」 「…あの…昨日は夕ご飯、ありがとう!! …すっごく、美味しかった!!」 蓬田は、そう言って頭を下げた。 「いや、別に…あれはおれが勝手にやっただけで」 おれが慌てて言うと、 「ううん。…私、甘えてたんだ。 椎名くんが優しいから、甘えてた。 ―…私、頑張るから!…椎名くんに迷惑かけないように」 蓬田は、そう言って笑った。 その笑顔を見ると、胸が締め付けられる。 ―…苦しくなる。 …お前はもう、頑張ってるだろう?? ―…体育も、逃げずに真剣にやってた。 空手の練習も行ってくれて、 配達も、朝のランニングも―… 冷蔵庫の中のおにぎりは、練習してるんだろう―…?? 「…甘えてんのは、どっちだよ…」 呟くと、 「へ??」 蓬田が首をかしげた。 「いや、なんでもない!!」 おれが答えると、 ぐう〜… お腹の鳴る音、 蓬田が真っ赤な顔をして俯いた。 「…ご、ごめん…」 ―…そっか、昼飯パンだけだったのか。 おれの身体は、それじゃ足りねえもんな。 鞄から、渡せなかった弁当を取り出した。 「まだ、大丈夫だと思う。…食うか??」 「…いいの!?」 目を輝かせる蓬田。 もちろん、いいに決まってる。 …お前のために作ったんだ。 前へ |次へ |
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