《MUMEI》
異人館
ママが俺を産んだ時の記憶は、正確に言えば、無いのだけど。
気が付いたら、ガムをクチャクチャやってた。
勉強は嫌いじゃなかったけど、効率と頭の悪い教師は嫌いだったし、実際そんな教師が大半だった。
まず日本語が、通じなかった。
逐一、返答がちぐはぐで、そんなお粗末なお喋りもどきを満足顔で喋る教師が、俺は大嫌いだった。

何故か知らないけど、(神様とか想像主とか言うのがいるならだけど) 人間に本来入れるべき部品を、俺は入れて貰えなかったみたいだった。
くそったれ野郎め。子供の頃は惨めだったし、大人になったらムカついてばっかりだ。

この世界は俺にとって、異人館だ。

どっちが狂ってるのか、俺はよく知らないけどね。
俺が唯一解ってるのは、俺の言葉は他人に通じなくて、他人の言葉は俺には通じないって事。
色々試行錯誤してみたけど、やっぱり駄目だね。解らないや。
お前がなんで、あんな猫の糞より面白くない奴に夢中なのかも、あいつがなんであんな犬の糞より、ありきたりな物を有り難がるのか。

無知なのか、鈍いのか、馬鹿なのか、卑怯なのか、俺が理解出来ないだけなのか。

お前達も、俺にそう思ってるんだろうけど、理解しようとしてるお前達も退屈だから、俺は今日も(少なくとも他人よりは俺にとって面白い)鼻ほじりに夢中だ。
遣り切れないよ。

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