《MUMEI》
********
何も聞きたくなくて耳を閉ざしてるんだね。
でも、時々不安になって耳を開いてみて、うんざりしてまた閉じる。
繰り返し繰り返し繰り返し、君をうんざりさせるのは、世間って奴で、世間って奴はなんだか解らないお化けみたいだね。
だから大人数は嫌いなんだろ。
君は自分の汚い靴を眺めて、他人の楽しそうな声を聞いて惨めさに泣きじゃくる為だけに、存在してるんじゃないって、気付いたからね。
でも、皆はそれが楽しいみたいだね。
沢山の金を浪費して、他人の作った歌を何時間もがなってみたり、不味いアルコールをがぶ飲みしては、大騒ぎして嘔吐したり、行きたくも無い場所に何万も出して行ってみたり、何もないセックスの為に鼻の穴を広げてみたりね。


そうしない奴は精神病みたいに扱われて、嫌悪と恐怖の眼差しで拒否する。
怯えてるのを隠して、笑顔で平気で嘘をつく。
自分が嘘をつかれたら、この世の終わりみたいに大騒ぎして、泣き喚くのにね。

異人館。

鼻をほじってる方が楽しい、って俺の気持ち、解ってくれるかなぁ。
解らないだろうから、未だに何年も俺は鼻をほじるのに夢中なんだけどね。

遣り切れないよ、全く。

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