《MUMEI》
一階ホール
向かい合わせて、キスコールまで掛けられているのに七生はあろうことか、握手をし始めた。



「……式はいつだー?!」

七生の握手により外野が一層盛り上がる。
婚約を承諾した流れだ。



『しき……?はる なつ あき ふゆ?』

七生は首を傾げた。


「挙げすぎだろ!」

誰かの一言に大爆笑が起こる。
瞳子さんは七生の手をしかと結んだままに固まっていて、露出されてる肌全て赤らんでいる。



和やかなムードに紛れ、胃の中のむかつきを抑えるべく、安西と会場から出ていく。

扉を閉める直前に七生と目が合った(気がする)。



『…………あ、あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!』

いや、目は合っていたな。
七生の演劇並に通る声量をマイクが拾い、裂けるような騒音がした。

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