《MUMEI》
臨時バイト
退院してすぐに、俺はコンビニのバイトを辞めていた。


俺は、バイト中顔色が悪い時もあったから、店長は残念がったがすぐに納得してくれた。


『働くのはいつでもできる。

それより、学生時代にしか出来ない事をした方がいいよ』


そう、春日さんの手紙にはあったから。


しかし、今日だけは


クリスマスイブだけは


志貴にどうしてもと頼まれ、俺は、志貴のバイト先であるショップに臨時のバイトに来ていた。


俺以外にも、臨時バイトで志穂さんも来ていたのだが…


(凄すぎ…)


ラッピングが趣味という志穂さんは、プロ級の仕上がりとスピードで作業していた。


「祐也、ボーッとしてないで! あといくら?」

「あ、3500円なら予算ギリギリ」


「これは?」


(えっと…)


俺は、15%OFFと書かれた値札を確認した。


「3650円」


「どうします?」


志貴は財布を見つめている男性に質問した。


「その位なら、大丈夫」

「じゃあ、これで、会計の方にお願いします」


志貴は、手にしていたカシミヤのマフラーを、男性に手渡した。


「さ、次行くわよ!」


今日の俺は、志貴の『人間計算機』だった。

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