《MUMEI》 居間に移動「せっかくだからまたかぶってよぅ…」×3 「嫌だ」 俺は、ロングヘアのウィッグを手に持って、志貴の案内で居間に入った。 「せっかくだから、それかぶりなさい」 一番上座にいた老婦人が俺に命令してきた。 「…はい」 有無も言わさぬその態度に、反射的に応じてしまった。 「さすがお祖母ちゃん」×4 俺と一緒に来た三人と、既に居間にいた祐が声を揃えた。 「田中…君、だよね? その声…」×3 「どうしたの? その格好?」×2 上の発言は、大さん・高山・仲村さんの三人で 下の発言は、楓さんと希先輩のものだった。 「貴子ちゃんと、志貴ちゃんでしょう」 「龍平もよ」 志穂さんの言葉に、貴子さんは悪戯っぽく答えた。 「「ご愁傷様」」 真っ白でヒラヒラなドレス姿の俺の両肩を叩いたのは、秀さんと… (…? 誰だ?) 俺は、細身でアイドル系な容姿の男性を見つめた。 「あ、俺は、徹(てつ)。高山 徹。志穂のいとこ。 …で、あっちが奥さんのケイト」 [このバカ息子共! お義母様より先にお客様に会うなんて!] 英語で怒鳴るケイトさんの声は、何故か志穂さんにそっくりだった。 前へ |次へ |
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