《MUMEI》
火花飛び散る会場
「頼、お前祐也には手を出すなよ」

「厳が希に手を出すのはいいのかい?」

「厳は、希の意志を尊重する」

「俺だって、祐也の意志を尊重するよ」


頼が俺にウインクしてきた。


「祐也は好きな人がいるのよ」

「そう言われて、フラレた?」


頼の言葉に志貴は赤くなった。


「やめろよ」

「そうだよ。全く、家族で楽しむイブに、あっちでもこっちでも火花散らして…」


大さんを始めとした大人の男性陣が、俺達の間に入った。


あっちの…


希先輩を巡って火花を散らしていた厳と高山の間には、志穂さんを始めとする女性陣がいた。


「それから、田中君…御指名だよ」


(ゲッ!)


俺の視線の先には笑顔で手招きする『お祖母ちゃん』の姿があった。


この場は落ち着いたが…


まだまだ俺は、楽しいクリスマスイブを過ごせそうも無かった。


「…御挨拶が遅れて申し訳ありません
志貴さんの高校の同級生で、田中祐也と申します。
あと、祐さんと…」

「そこは知ってる。
私は、高山果穂。こっちは大志」


そう言って立ち上がった『お祖母ちゃん』は、俺より身長が高く背筋も曲がっていなかった。

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