《MUMEI》 初めての笑顔「祐也、おかえり! ケーキとっといたぞ!」 「ありがとう」 俺は、祐から志穂さんが作ったケーキを受け取った。 「…? 何だ?」 祐が俺を見て目を丸くしていた。 「ゆ、祐也が笑った」 「祐也は、普通に笑うわよ?」 「今まで俺には一回も笑ってくれなかった!」 志貴の言葉に絶叫した祐に 会場中から 『可哀想に』という視線が注がれた。 「せっかくだから、今夜は一緒に風呂に入って一緒の部屋で寝たら?」 果穂さんの爆弾発言に 志貴以外の全員がダメ出しをした。 「ねぇ、何がそんなにダメなの?」 「それは、もう一人のゲストが来てから説明する」 「「もう一人?」」 果穂さんの言葉に反応したのは、俺と志貴だけだった。 「志貴も、…もう、知ってもいい頃だろうからね」 その時。 玄関のチャイムが鳴った。 「迎えに行きます」 そう言ったのは志穂さんで、仲村さんも後に続いた。 (え?…) 俺は、その二人が親しい人物を一人しか知らなかった。 (まさか…な) しかし、ありえないと首を横に振った。 ここは、志穂さんの実家なのだから…と。 前へ |次へ |
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