《MUMEI》
祐で良かった
「あ〜、すみません、お邪魔しました」


顔を出したのは祐だった。

(志貴じゃなくて良かった)

俺は、昨日気絶した志貴を思い出していた。


「何か、用だったか?」

「いや、大した事じゃないよ。俺も、これからデートだし」

「どっちとだ?」


思わず質問した俺を、祐はキョトンとして見つめた。

「祐也が俺に関心示すなんて珍しいな。
昼間は沙希で、夜は雅樹だよ。
沙希の家は門限が厳しいから。

じゃあ、」

「祐」


俺は、その時本当にうっかり『先輩』を付け忘れた。

「何だ?」

「今度、話がある」

「俺もだ。…今度な」


祐はパタンと玄関の扉を閉めて出ていった。


忍はすぐに衣服を持ってトイレに行った。


トイレから出てきた忍は、いつもの執事の忍だった。

それから、俺と忍は、車でドライブに出かけた。


『続きは外で』


そんな印象を、忍は周囲に植え付けた。


忍のおかげで


この件以来、屋代さんや仲村さんは、俺の顔を見るたびに赤くなっていた。


そして、二学期の最終日。


放課後、俺は祐に呼び出された。

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