《MUMEI》

荒かった蓬田の息遣いが、落ち着いてきた。



雷も、治まってきた。




…それからおれは、はっと我に返った。



いきなり、身体が熱くなってくる。



―…やべえ、おれ、なにやってんの!?



蓬田の肩と頭から、そーっと手を離す。




「……わ、わりい…」




小さく謝ると、




「ううん。…ありがとう。
だいぶ、落ち着いたよ」




と、蓬田は微笑み返してきた。



「…いや…」



言葉に詰まるおれ。


蓬田がゆっくりと立ち上がった。



「…帰ろっか!!」




おう、と答えて、おれも立ち上がる。




資料室を出るとき、




「…騒いじゃってごめんね、椎名くん」




蓬田が恥ずかしそうに笑った。




「…気にすんなよ、」




言いながら、呼び方が元に戻ってることを
ちょっと残念に思ったりした。

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