《MUMEI》

帰り着くまで、雨は降らずにすんだ。


おれたちは、土曜日にネコを探す約束をして、別れた。



帰る間中、おれは自分のしたことを後悔していた。



蓬田は、



「単なる噂なんか、気にしててもしょうがないのにね。
…昨日は、いきなりごめんね。」



と、距離を置こうと提案したことを謝って、
戻る方法を一緒に探そうと言った。



嬉しかったけど、



―…怖い。



…蓬田は、『西城先輩』が好きなんだ。




おれは―…




おれは、気持ちを抑えられる自信が無い。



―…蓬田を困らせてしまいそうで、怖かった。



  
  だめだ。



何考えてんだ、おれ。



おれが強くなんないで、誰が蓬田を護るんだよ。





どうやっても、抑えてみせる。




―…この気持ちも、衝動も。

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