《MUMEI》 優しさ 〈私〉「……わ、わりい…」 小さな声で謝る、椎名くん。 「ううん。…ありがとう。 だいぶ、落ち着いたよ」 笑って答える。 本当に落ち着いた。 椎名くんは、私を安心させるために、 恥ずかしいのを我慢して抱き締めてくれたんだろう。 椎名くんの優しさに、心から感謝した。 ―…子どもみたいだな、私。 「…帰ろっか!!」 恥ずかしくなってきて、立ち上がった。 「…騒いじゃってごめんね、椎名くん」 資料室を出る時、椎名くんにもう一度謝った。 「…気にすんなよ、」 俯いて答える椎名くん。 ―…本当は、すごくドキドキした。 …ううん、 今も、ドキドキしてる。 椎名くんの体温と、掌の感触が消えずに―… 男の子に抱き締められるなんて、初めてのことで。 見た目は『私』でも、椎名くんは、『男の子』だった。 心臓が、激しく鼓動を刻む。 …ドキドキは、なかなか治まってくれなかった。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |