《MUMEI》
仮の姿
ーーチュン、チュンチュン……




いつもは皆が感じる爽快な朝も、俺にとっては孤独でしかない。


なぜかって?


そりゃ、誰だってこれを聞いたら納得するはずだ。





俺はイジメを受けている身なんだ。




イジメられている理由なんて思い当たる節もない。


ただ、学校で毛嫌いされている。


親は俺のことなんて見向きもしないし。


唯一いた友達からもあっさりと裏切られた。


本当、こんなのが人生なんて思いたくもないよ。



「おい、拓也!!俺らのためにジュース買って来てくんねぇ?」


教室に入ると、いきなり声を掛けられた。


ああ、またか。


クラスではリーダー的な存在。


少し丸まった鼻は彼の吊上がった目を一層際立たせている。


「早く買って来てくれねぇ?授業始まっちまうんだけど。」


なんて人使いが荒い奴なんだ。


そいつはその傲慢な性格からなのか、他クラスからも一目置かれている。

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