《MUMEI》
『カギ』
俺達にやや遅れて二台が並んだ。

俺は、それを確認すると、コースに飛び出した。

後ろの三台も続いてコースイン。

俺はアクセルを目一杯捻り、ストレートを駆け上がった。

やはりスプロケ交換のRVF、600CCのGSXーR、6Rは、即座に俺のテールを捉えた。

あいつ等の方がストレートは速い。

だが、それが生かせるのも中盤までだ。

中盤に差し掛かると、テクニカルコーナーが続く。

コーナーを速く走るのも大事だが、コーナーとコーナーのつなぎ方が重要だ。

俺が、あいつに教えたいのは、

【コーナーを攻め込む】

のではなく

【コースを全体攻め込む】

と言うことだ。

速く走る為には、ポイントを見つけ、その為には捨てるコーナーもある。

特に、俺が得意とするS字からヘアピンの組み合わせだ。

ヘアピンは入ってしまうととパーシャル待ちが長い。

そこで、進入速度が『カギ』を握る。

それをあいつに伝えたい。

(気づけよ!!)

そう願い、S字の右へのアプローチに入った。

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