《MUMEI》
敗北
周回を重ねる度に、あいつはどんどん上手くなっていく。

(こいつ、なかなかの素質だ。

ほぼ全開の俺に食らいついてくる。

もうすぐ、俺の得意なS字コーナーだ。

(そろそろ限界か)

長いいバトルで、俺の手は痺れ、感覚が無くなってきた。

(これが最後だ!!)

俺は、いつも通りのラインでS字コーナーへ進入していった。

あいつも同じラインをトレース。

素早く切り返して最速ラインに乗せて立ち上がった。

レールを走るように、あいつも同じラインを立ち上がった。

加速の良いあいつは俺のテールに迫ってきた。


初めて最速ラインに乗せたあいつは、今までに無いスピードでヘアピンに突っ込んだ。

(ビビらず着いてこい。 今のお前ならクリアできる筈だ)

あいつは、俺よりやや、アウト気味にクリアし、ストレートで俺にかぶせてきた。

(完璧だ。 俺の負けだ)

追い抜きはしなかったが、展望台まで俺を煽ってきた。


腕はほぼ互角。
加速重視のセッティングにしているぶん、あいつの方が速い。


あとは、あいつがこのラインを走り込めば最速も夢じゃない。


俺は止まる事なく展望台を出た。

あいつも合わせて出て来たが、俺は左にウインカーを出し、追い越すように促した。

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