《MUMEI》

えーと、なんて書こうかな……合格祈願……?
取り敢えず、七生と乙矢の名前も書いて……
しまった、フルネームで書いたら俺の名前が入らない……う、裏に書くか……。


「あっ 落ち……う!」

手から書いていた絵馬が滑り落ちる。
落ちる、は禁句だから口を噤んだ。
絵馬はくるくると地面を回っていく。

誰かの足元で止まった。


「はい、“拾った”よ?」


「ありがとうございます!」

落とさずに済んだ。
拾ってくれた男性は俺のように和装で、薄い黄色の着物に鼠色の羽織りの装いが似合う。

朗らかな笑顔が眩しい。

「受験生か……、頑張ってね。着物組だから応援するよ。」

その人は俺も着物を来ているからだからなのか、受験にエールを送ってくれた。


「二郎遅………………、」

俺がとろとろしていたから乙矢が寄ってくる。

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