《MUMEI》 祐と待ち合わせ「また変わった場所に…」 「だってここが一番、人来ないし。意外とあったかいだろ?」 (まぁ、そうだけど…) 「部員が来るんじゃないか?」 「今の時期は、俺が育ててる分しかないよ。だから、大丈夫」 そう言って、祐は植えてあるハーブの匂いをかいだ。 ここは、普段は園芸部員が使っている、中庭の花壇の隣にある小さなビニールハウスの中だった。 ビニールは半透明で、至近距離でなければ俺達の姿は外から見えなかった。 立ち上がると頭がつくから、中腰の姿勢で入った俺達は、中で祐の敷いたレジャーシートの上に座っていた。 「…で? 話って?」 「あのさあ、お祖母ちゃんが言ってた事なんだけど…」 「祐先輩の片腕にってやつ?」 「そう。あ、祐でいいぞ。 昨日もそうだっただろ?」 「…よく覚えてるな」 忍と抱き合っていたし、一回呼んだきりだったのに。 「まあな。それに、俺達、友達だろ?」 祐の言葉に、俺は一応頷いた。 「だったら、名前で呼んでくれよ。 …志貴、みたいに」 「わかった。…で? 話の続きは?」 俺の返事に微笑みながら、祐は話を元に戻した。 前へ |次へ |
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