《MUMEI》 尊敬の基準「祐也にとって尊敬できる人って誰だ?」 「春日さん」 祐の質問に、俺は即答した。 「あ〜! あれは、レベル高過ぎ! 今の俺には無理無理無理! 多分一生無理! もうちょっと下げてくれ!」 「どういう意味だ?」 「だからぁ! 俺が目指せる尊敬レベルにしてくれっていう意味」 (祐が目指せる? レベル?) 俺は意味がわからず首を傾げた。 「俺さあ、料理は大好きだけど、お祖母ちゃんが作って、秀さんが継いだ今の会社を維持する自信は全く無いんだ」 高山家は、いくつかの飲食店を経営していて、秀さんはそのうちの一つ 祐が時々勉強の為に訪れる高級中華料理店の料理長で 同時に、会社の社長でもあったのだ。 祐は、次期料理長としては秀さんに見込まれていたが、次期社長としては、果穂さんに心配されていた。 「けどさあ、秀さん独身だし、昔から俺や希に特に優しかったし… できれば、継ぎたいんだ、ちゃんと」 祐は、いつになく真剣な表情で自分の未来について語った。 (ちょっと、尊敬できるかも…) 何となく本人が調子に乗りそうだから、俺は今の祐が尊敬できるとは言わなかった。 前へ |次へ |
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