《MUMEI》
祐の本音
グイッ!


「… …冗談だよ」


俺は、俺を至近距離で睨みつける祐に告げた。


「悪い」


祐は掴んでいた俺の制服のワイシャツを離した。


「いや。お前、安藤先輩と葛西先輩なら、葛西先輩の方が好きなんだろ?」

「そうみたいだ…でも」


祐は珍しく頭を抱えた。


「沙希は、料理のセンスがすごく良くて、一緒に夢を追いかけたい大好きな女の子なんだ。

それに、結婚した方が…」

「秀さんだって独身だろ。
それに、俺、公私混同する上司は嫌だってさっき言ったぞ」


俺は、祐の腹に拳を軽く当てた。


「俺に尊敬されたかったら、そこははっきりしろよ」

俺にははっきりわかった。

一応、祐も普通に世間体は気にしていたのだと。


会社を継ぐにはふさわしい嫁が必要だと、それで安藤先輩を選んだのだと。


安藤先輩は、尊敬できて、人間として、…一応、彼女としても好きだけれど


本当に、恋人として愛しているのは


たった一人。


葛西先輩なのだと。


「うん。…祐也に言われてみて…

今、はっきりわかった。

今から行ってくる!」

「そこは尊敬できるぞ」


俺は今度は口に出して祐に伝えてやった。

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