《MUMEI》

「よし、安西、カラオケ行くか?奢ってやるよ。」


「この恰好でですか?」

文句は言わせない。無理矢理にでも連れていく。


「この辺にいい場所無いの?案内しろ案内!」

道を知らなさ過ぎて安西に催促する。





安西は慣れた様子で受付と話してすんなりと事が運ぶ。一緒に要ると何もしなくていいものだかららくちんだ。


「うーんと、俺すぐ決まらないから安西先に歌ってくれる?」

……なんて。
自分で誘っときながら、カラオケは七生と乙矢と何度か行ったくらいで慣れていない……。



安西は器用ではないがなんでも与えられた仕事は律儀に取り組む。
そのせいで貧乏くじは頻繁に引いてしまっている。
今だってそうだ。

俺に気を遣って四曲も連続で入れている。


「安西上手いなあ……よく行くんだ?」

片手でマイクのボリューム調整したりと器用だ。



あ……これ、七生が上手かった歌だ……。
七生の声量がサビをより盛り上げてた。


七生も歌の途中に食べ物オーダーしたり器用だった。


「先輩あまり行かなさそうなタイプですよね。」

「俺だって付き合い程度は嗜むよ。それに七生とも……なな…………」

あ、泣く……。


「先輩って泣き虫ですね。」

「……うっさい。」

ソファに突っ伏して泣き顔を隠す。

格好悪い俺は、訳も分からずに泣いた。

だって酷い、お姫様の誕生日にカッコイイ七生が朗読なんかしたりして婚約発表だろ……?お似合いじゃないか。

勝ち目無い…………

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫