《MUMEI》
早ク
「環、どこ行くんだ?今は大切な時期ってことわかってるのか?」

「あ、ハイ。わかってます」

環のマネージャーはなんとなく感付いていた。環に男がいる、ということに。

それを咎めることはしないが、環の性格を考えると一応釘を刺しておかないと気が気ではなかったのだ。

今、来月から始まるドラマの主役の候補に環が挙がっているという噂だ。

監督や演出、スタッフがあまり情報を出さないため、詳しいことはわかってないが、もしそうなら今問題を起こす訳にはいかない。

「早く…帰ってきなさい」

「わかりました」


***


「流理さん、環です。ちゃんとおとなしくしてましたか?」

「……ハイ」

退院して、しばらくは安静を医者から言われていたのに、流理は早速仕事に行った。

それは再び環の怒りを買い、流理はまた深く反省をしたのだった。

そして一日中、環の部屋でおとなしく環の帰りを待っていた。

「またこれから仕事があるので、今日は帰りは遅くなります」

「そうなんですか?わざわざ帰って来たのはやっぱり……オレの様子を見るため?」

「それもありますけど…自分でご飯を作らせる訳にはいきませんし」

「あ、ありがとうございます」

流理はとにかく自分の仕事が気になった。

どれだけ停滞させてしまってるのか、どれ程迷惑をかけてしまっているのか気になって、気になって仕方がなかった。

月岡さんは気にしないでゆっくり休めと言ってくれてるけど、本当のところどうなのかわからない。

早く現場復帰したい。

早く元気にならないといけない。

早くみんなを安心させたい。

最近流理の頭の中はそればっかりが支配している。

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