《MUMEI》
志穂さんの過去
「結局最終的にはたった一人を選ぶのかな」

《例外がお前の側にいるがな》


『恋人同士なら、声を聞きたいと思うのが普通』


そう言われて、俺は忍と毎日メールではなく電話でやりとりをするようになっていた。


とは言っても、忍は忙しいから、まずは俺が大丈夫な時間帯をメールで報告して、それから忍が電話してくる形だった。


「仲村さんの事か」


それは、俺も疑問だった。

《まぁ、ゲイの彼氏とバツイチ妻だから、聞き分けはいいだろうが》

「…は?」


(誰が、何だって?)


そして忍は、俺の知らない志穂さんの秘密を語った。

果穂さんは俺の過去を知らなかったが、忍は志穂さんの過去を調べる事が出来ていた。


改めて、忍の有能さを実感したが、それ以上に、志穂さんの過去に俺は驚いた。

志穂さんは、十代で突然脳波が乱れるとう奇病に冒され、毎日服薬しなければまともに動けない体になってしまった。

薬の副作用で、思春期の志穂さんの体は、今と比べ物にならないくらい太っていた。

その後、今のように美しく痩せた志穂さんは、ある男性と結婚したが、…夫による暴力が原因で離婚していた。

そして、仲村さんと再婚した。

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