《MUMEI》

千石様は私が一日中看ていた。

血は出ていたが傷口もさほど酷いものでもなく、小さな射し傷くらいは簡単に縫合くらい可能な医療施設にて無事に一命を取り戻す。

眠る千石様は死んでいるようで、私には千石様が死んでしまうなんて想像出来なかったので不気味だ。

今にも目を覚まして私を絞め殺しそうだ。

千石様の体は激務による過労と、今回の失血で倒れない筈は無かった。

微熱も出ていた。





熱が落ち着くと藤間さんに無理矢理追い出されてしまう。

主人の目覚めを私のような人間で不愉快にさせられないということか……


「くれぐれもこのことは口に出さないように。」

天下の氷室千石が刺されたなんてスキャンダルを口にするには覚悟が必要だ、そんなこと私には出来ない。

仕方なく、部屋に戻ることにした。


地下には千秋さんが迎えに来てくれていた。
千秋さんは粗暴に振る舞うが千石様を助けるために私を呼んで下さった。

父親を欲していないが私を迎えに来てくれる。




友人や理解者が欲しいのかもしれない。

私に出来ることであれば精一杯応えたいと思う。

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