《MUMEI》
今年最後の訪問客
米を計量カップに入れていたら、玄関のチャイムが鳴った。


「は〜い」


ガチャッ


「…」


ドアを開けると、私服の志貴が無言で立っていた。


「…どうしたの?」

「祐也こそ。
彼氏と過ごさないの?」


『彼氏』


その単語に、俺は激しく動揺した。


「お祖母ちゃんに聞いたの。あの後…」

「そそそう。…大丈夫だった?」

「気絶した」


(うわぁ…)


「ご、ごめん…」

「本当よ」


志貴に睨まれ、俺はうつ向いた。


「何で祐に言って、私には言わなかったの?

遠距離恋愛の、忍さんていう年上の彼氏がいるって」
「そ、それは…」


忍は元々、安藤先輩に対しての嘘の恋人だったし。


何よりも、志貴にはショックが大き過ぎると思った。

「気絶した私が言うのもなんだけど、祐也がゲイだからって私は友達やめたりしないわよ。

ただ、祐也の事で、祐が知ってて、私が知らない事があったのが嫌だったの」

「ごめん」

「許さない」


きっぱり言う志貴に、俺はショックを受けた。


グイッ!


「だから、年末年始は私に付き合いなさい!」


混乱している間に、俺は津田家に連行された。

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