《MUMEI》
初詣の待ち合わせ
「「祐也…」」


新年の挨拶の前に、守と拓磨は俺を見て固まっていた。


「可愛いでしょ?」

「志貴さんの方が素敵です」


拓磨はそう答えたが、守は大きく頷いていた。


「着物が、だろ。つーか、お前等だって着物じゃんか」

「守様々だよ」


拓磨が守の肩に手を置いた。


「何で?」

「うち、着物屋」


照れながら言う守を、拓磨が『よ! 若旦那』と茶化した。


「へぇ」

「煩いなぁ」

「まあまあ、さ、行きま…」


[祐也見っけ!]


(この声…)


俺達四人が振り向くと


「頼…だよな?」

[正解! 愛の力だね、祐也!]


黒いスーツに身を包んだ、変態双子の片割れは、俺に抱きついた。


[わぁ、やめろ!着物が乱れる!]

「祐也が外人になってる…」


(そ、そうだ!)


俺は、頼を押し退け、守にしがみついた。


「祐也?」

「お前、着物直せるだろ? ここに残ってくれよ」


俺は、志貴と拓磨に先に行くよう伝えた。


そして…


バキッ!


[痛ッ! つ、強すぎだよ祐也!]

[煩い!とっとと帰れ! お前アメリカに住んでんだろ!]


着物の乱れを気にせず、頼を叩きのめした。

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