《MUMEI》
若旦那の主張
(意外と手強かったな…)


頼を追い払うのに時間がかかり、変に注目を浴びた俺は、守と一緒に人気の無い場所に移動した。


「悪いな、守」

「いや、べ、別に…」


守は何故か震える手で俺の振袖を直してくれた。


「サンキュー、じゃあ…」

「祐也!」

「ま、守?」


歩き出そうとした俺を、守が止めた。


「お前が男なのは知ってる。でも、今のお前はどっからどう見ても、可愛い女の子だ」

「…何だよ急に」


守の目が鋭く光った。


「だからな」


守は、俺の足元を指さした。


「がに股はやめろ! 歩き方教えてやるから!

許せないんだ、俺、そういうの!」


守はいつもはごくごく普通の高校生だが、やはり着物屋の息子で


若旦那と言われるだけあって


着物が絡むと普通じゃなくなる高校生だったのだと


俺は、今日一日で思い知った。


「祐也がますます可愛くなった一日だったわね」


(もう、着物はごめんだ…)

志貴と一緒に津田家に帰ってきた俺は、ジャージに着替えると、すぐに横になった。


本当はアパートに帰るつもりだったのに、目が覚めたら朝だった。

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