《MUMEI》

「な、…たか…し…」



突然崩れ落ちた隆志に俺は這う様に近づく。


「…なんで…、隆志が泣くんだよ」



頼りなさ気に、涙を隠す事もなく俺を見る隆志。


「…泣いちゃいけねーのかよ、


本当は…、本当の俺は…
惇の事守れる様な強い奴じゃない…、
弱いんだよ、



すっげー…、


いつだって不安で、…何やったって本当にしっかりやれてるか自信なかったり…、



わかんね、



もう…、俺だって…、本当は、…ー




惚れた奴に甘えて、…、惇に甘えたり弱音吐いたりしたいんだよ…」





「……………
たか……し……」





頼りなげな…こんな彼を目の当たりにしたのは初めてで…




「俺に…弱いとこ…見せて…、もっと…」





俺も…、消えそうな小さな声しか出せなかった。




しかし隆志はそれをしっかりと聞き逃さないでくれた。




「惇…、惇…、
傍にいて…、好きなんだよ…、俺だけ見て…、頼むから俺だけ考えて……、あいつは…、あいつの事はそんな風に考えんなよ……」







隆志は俺にしっかりとしがみつき、そして抱きしめてきた。






包まれているのは俺なのに…






抱きしめられているのは俺なのに…






まるで俺が抱きしめている感覚に陥り…







俺は隆志の背中に腕を回し、優しくいつまでも摩り続けた。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫