《MUMEI》
年賀状
「どうもお世話になりました」


一月二日の夕方、俺は貴子さんの車でアパートまで送ってもらった。


「いえいえ」

「またね、祐也」


運転席の貴子さんと、助手席の志貴に手を振り、俺は部屋の前まできた。


「うわ…」


ポストからはみだしそうなほど大量の年賀状が届いていた。


最近は、メールで済ませるのが普通らしいが、俺は、携帯番号やメルアドを初詣で会った三人と、彼女と初詣に行った真司にしか教えていなかった。


(それにしても、多すぎだろ)


年賀状は、同級生がほとんどで、後は演劇部員と…


「…はぁ?」


部屋の中に入り、年賀状を確認していた俺は奇妙な文面を見つけた。


『会員番号 〇〇番 〇〇です
振袖年賀状期待してます』

(まさか…)


俺は、志貴が『お土産』と言ってくれた封筒の中身を確認した。


(…やっぱり)


そこには、俺と志貴の振袖姿がプリントアウトされた年賀状が大量に入っていた。


『ごめんね。祐也のファンがあんまり多いから、ファンクラブ…

作っちゃった。振袖はアンケートで一位だったの』


「マジかよ…」


俺は、同封されていた志貴のメモを見つめて頭を抱えた。

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