《MUMEI》

「いや、俺は無理だよ。


もう動いてないから。」


(父さんと母さんはいない…か。


息子が久々に帰って来たってのにこれだよ。


いるのは兄貴だけか。)


「弟いかせるから。


ポストならいいんだろ?


うん。


うん。


大丈夫。


おっけ。


ま、なんとかするわ。


うん。


じゃあまたな。


あい。


ばいば〜い。」


(弟をいかせる?


俺に関係ある話だな。


なんだろ?)


「よ。おかえり。」


「うん。


今の電話なに?


俺がどうとか言ってたっしょ?」


「あぁ。


俺の友だちが今度試合するんだと。


で、ポストが足りないから俺に出ろって言うんだけど、


ま。


俺無理じゃん?
動いてね〜し。」


「だろうね。」


「で、代わりにお前を行かせるって話。」


「…


いやいやいや!!


俺も無理だよ!!


練習あるし!!


知らない人となんか試合したくないし!!」


「おいおいおい。


お前俺の頼み断れる立場じゃね〜だろ?」


「え?」


「お前が俺に借りてる借金。


4万近いんだぞ?


それとも今月中に耳そろえて返せんのか?」


「…それをネタに使う?」


「今月末だから。
よろしくな。」


「…マジかい。」


「大マジ。」


「はぁ…


わかったよ。


出ればいいんだろ。」


「よろしく〜。」


合宿が終わり、


予想外の試合がいきなり入った。


「で?


どことやんの?」


「お前は俺の友だちのチーム。


で、相手は赤高。」


「…赤高?」

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