《MUMEI》 「モモ様、痛いかもしれませんが少しずつ軸を動かして皮膚の癒着を防いで下さいね。」 結局、手ほどきされてしまう。 ピアスなんて私には無関係な物だと思っていた。 「千石様はモモ様を大切にされているのですね。」 「……え?!」 まさか、そんな言葉が出て来るだなんて信じられなかった。 「……最初は半信半疑でしたが、確信しております。 モモ様は“特別”です。 かつて主人から拘束具以外の物を与えられた人物は萬代様以外にモモ様だけなのです。 それにモモ様はお美しいです。この氷室家の誰よりも心までも、まるで菩薩や聖母のように。」 「私はそんな言葉を頂ける資格はありません。きっとピアスだって千石様の気まぐれですよ……」 「そうでしょうか。 そのブラックオパールは高価な物ですよ、黒い十字架は罪を償う意味を込めてモモ様の為に作らせたのものではないでしょうか。」 千石様の言葉にはそのような意味が含まれていたのか…… 「……せ、千石様のことは私には分かりません……」 「モモ様顔に出てますよ、真っ赤〜!」 からかわれた。 赤くなっていたのか、でも、何故? 千石様は私を蔑ろにして散々酷いことをされてきた。 でも、怖い反面、どこかで期待している私がいる。 千石様がもし、私を物以外に扱って下さるなら…… だなんて。 それこそ、夢みたいな話だ。 前へ |次へ |
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