《MUMEI》

「お前、結局それスタートからゴールまでだろ。」


「えっ?!
あーそうなるなーっハハハハ…」


…ったく、面倒くせぇヤツ。


「おーい、勝己!!
もうそろそろ始まるぞっ」


100Mのスタート地点から、
短距離組の一人の声が聞こえて来た。


「えっ?
もうそんな時間?!」


木村が慌てて時計盤を見る。


時計盤は10時20分を指していた。


100Mは確か10時30分からタイムを測り始める。

「やっばっ!!
じゃあ颯馬、あとは頼むっ」


それだけ言うと、
スタート地点へ駆けて行った。


「…お願いしますだろーが。」


俺はボソリと不満を漏らすと、
木村が走るレーンの近くへとゆっくりと歩き出した。







パァンっ!!!


スタートの合図。


合図と同時に第1組目の奴等が走り出す。


木村は3組目だ。


俺はぼーっと1組目のレースを見ていた。

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