《MUMEI》

ドクン…ドクン……


さっきから胸騒ぎが鳴りやまない。


どうしちまったんだ…俺……


「颯馬ーー!!
頼んだ!!!」


顔を上げると、スタート地点に木村が立っていた。


腕をブンブン振ってこちらに合図を送っている。

どうやらさっきの声の主は木村だったみたいだ。

俺は軽く手を上げて合図を送ると、
腕組みをしながらスタートするのを待っていた。





パァンっ!!!


3組目のスタートの合図。


真っ先に飛び出したのは…木村だ。


そのままトップスピードに入る。


だが、ゴールの手前で一人に抜かれてしまった。

木村のレースを冷静に分析していると……



ドクン…ドクン……


またいまさっきの胸騒ぎが鳴り始めた。


「颯馬ーどうだった?!」


息を切らしながら木村が駆け寄って来た。


「全然ダメ。」


俺はだんだんと高鳴ってくる胸騒ぎを抑えながら、
木村に説明しだした。





「……まずスタート。」

木村がゴクリと唾を飲み込む。


「反応は良かったが、
体勢を起こすのが早すぎ。

まあ、背が高い分、
どうしても周りの奴よりは早く起き上がってしまうだろうが、
力を溜めると思って、
もう少し上体を起こすのを遅くしろ。」


…ドクン……ドクン…

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