《MUMEI》
墓地での出会い
「ん、どうした?私何か変なこと言ったかな?参ったな〜まぁ君は悪人では無いみたいだし・・」
覗き込むように、狩月を見る。狩月は慌てて視線をそらし、
「すみません、知らなかったとはいえ、興味半分で来たことには変わりないわけで・・でもその・・悪戯とかしようとかは全然思って無いですから・・」
その返答に「あははは」と声を上げ、分かってるよ。そう返す。
「で?何処行く予定だったの?迷子な訳でしょ?困ったものを見捨てて行ったら守護騎士の誓い違反だしね。」
「その、守護騎士団を見に来たんです。」
そう答えた狩月を不思議そうに見て、
「入団希望って無謀な人には見えないけど・・見て面白いものなんてあったかな?バンプにごまくらいだよ?まぁいっか・・付いて来てよ。」
笑いながら、歩き始める。
墓地を抜け通りに出たときだった。
「いた!!!彩!!何油売ってるんだよ!会議始まったじゃないか!!」
そう言ってこちらへ疾風のように駆けてくるのは獣人。
「おわぁ!!バンプ。」
驚いたように後ずさりをする女騎士。逃がすかとでも言うようにさらに速度を上げ突っ込んでくる獣人。女騎士はさっと回避するが・・後ろには狩月。当然のように獣人に跳ね飛ばされる。鋭く尖った爪や牙に当たらなかった事に安堵しながら・・狩月の意識は遠くなっていく・・
「やっば!!」そんな声を聞いた気がした・・
獣人が狩月を跳ね飛ばしたことに気がついた女騎士は、即座に全身に魔力を行渡らせると、次の瞬間には狩月を受け止め、傷が無いことをざっと確かめ、声を上げる。
「バンプ!!ヒト撥ねるなって何度言ったら分かる!!いくら爪や牙に保護術式が宿ってるからって怪我くらいはするんだぞ。」
大きな怪我が無いことに安心しながら獣人を睨む。
「悪かった・・ってお前が避けるからだろ・・」
そう言いながらもかなりショックを受けているようだ。獣人の自慢の尻尾は力なく垂れている。女騎士はやれやれと肩を竦めながら狩月を背負うと歩きだそうとする。すっと獣人が手を出し狩月を換わりに肩に担ぎ歩き出す。
「誰だ?これ・・」
肩に担いだ狩月を示しながら聞く。
「良く分からないってのが事実かな。私達に用があるみたいだったし・・そだね、救護室にでも届けといてよ。私の客ってことで。」
「俺が・・か?会議出ないとまずいんだけど?」
「そそ。よろしくね〜バンプ。会議は私が出とくからさ。」
はぁ・・と狩月を肩に担いだまま器用に肩を竦める。
「まったく・・困った団長様だよ・・また居候増やす気?」
「またって・・酷いなぁ。式夜は居候じゃないよ?騎士見習い・・ってのも違うか。」
む〜と呻りながら歩いて行く。その姿にあきれたように大きくため息をつく獣人。
「はぁ・・・とりあえず彩は会議出ろよ。こいつは救護室に連れてくから。」
「は〜〜い。ちゃんと運んでおいてよね〜」
間延びした声でそう答え会議室へと歩いていく女騎士を見送り獣人は救護室へ向かう。

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