《MUMEI》
衝動
俺は今、物凄い視線を感じている。


それもそのはず。


今俺が立っている場所は……





100Mのスタート地点。

俺は走り幅跳び専門だ。

なのに…


あの音を聞いて、居ても立っても居られなくなった。


「何で颯馬先輩がここに……」


ありったけの勇気を出して俺に声を掛けたのだろう。


だんだんと声が小さくなっている。


「変われ。」


俺はそいつに言うと、
そいつが走るはずだった、
レーンのスタート地点に立った。








スターターも突然の俺の登場に、
少々驚いている様だ。


しかし、コホンっと一つ咳払いすると、
仕切り直したようにピストルを掲げた。


「位置に付いて。」


マイク越しにスターターの落ち着いた声が響く。

俺は周りの奴等と同じように、
軽く会釈をして位置に着いた。


そして、4レーンに置いてあるスタブロに足を置いた。





スターター:スタートの合図をする人。

スタブロ:スターディングブロックの略称。
スタートをする際に使われる器具。

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