《MUMEI》 俺は咄嗟に木村の手を払っていた。 「……!!」 さすがに俺もビックリした。 手が勝手に動いたからだ。 木村を見ると、俺以上に目を見開いてビックリしている。 「と、とにかく、 俺はリレーメンバーになれないから……」 「そのとおりだ。」 ドクン… 気が付くと、父さんが後ろに立っていた。 「コーチっ!! でも颯馬は俺より絶対タイム速いんです!!」 岡部が声を荒げる。 「そ、そうなんですよ!! タイムの速い人をリレーメンバーに加えるのが妥当かと……」 「いや、颯馬は幅跳び専門だ。」 ドクン… 「颯馬にリレーメンバーなど似合わんよ。」 「でも……せっかく速いんだし……」 岡部が一人言のように呟く。 「颯馬の足はな、幅跳びのためだけにあるんだ。」 …ドクン その父さんの言葉で、周りの空気が凍り付いた気がした。 前へ |次へ |
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