《MUMEI》 「次、滝澤颯馬。 準備。」 「はい。」 俺は、この競技場で審判を勤めているであろう、 黄色いジャージを着ているおじさんに頭を下げた。 そして、走り幅跳びの助走の位置へと付く。 前方には砂場があり、 その砂場を遮るようにして赤い旗が掲げてある。 これはまだ跳ぶな、と言う合図だ。 俺はジャンプをしたり、太ももを叩いたりして自分を落ち着かせる。 前方に見える旗が赤から白に変わり、 大きく縦に振られた。 これは跳んで良い、と言う合図。 その合図とともに、 皆の視線がグッと集まったのを感じた。 緊迫した空気の中、 俺は走り出した。 前へ |次へ |
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