《MUMEI》

冷たい硬い床で目を覚ます。暗闇の密閉された空間に手足の不自由さに気付く。

一瞬、あの拘束された地下室を思い出したが、違う。

もっと古い雰囲気がした。


「目覚めたか、お姫様?」

檻だ……格子の向こうに誰かが居る。


「この間より濃度の高い薬を使っている、二週間はまともに身体が動かないだろうな。」

耳も遠くなっていて、何度も何度も言葉が頭の中を繰り返す。


「……何故、お前は写真を持っている……。
同じ顔をして、誑かしたのか?お前が萬代様を殺したのだろう。」

萬代様……憲子さんのお子さんの名前だ……。





「その、お気に入りの淫売の躱を嬲って殺したら千石はどんな反応をしてくれるだろうな?」

黒い着物であるが、千石様ではない。
私は言った通り殺されるようである。


「躱を切り取るのもいいな、何処がいいだろう。耳?指……舌に、男性器?ああ、臍にイイものがぶら下がっている。
それとも今、口にした全てを切り取って綺麗に硝子匣に配置してやろうか?」

私の耳、指、舌、下腹部、そしてピアスをゆっくり触れられる。

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